ご存じの通り、相続税は相続が発生した全ての方にかかる訳ではありません。国税庁の発表によれば、全国の2018(平成30年)に亡くなられた方(約136万人)に対し、相続税の課税対象となった人は約11万6千人と、全国平均では相続が発生した方の8.5%でした。
しかしながら、神奈川県は13.2%%と東京都に次いで高い数値となっており、日吉を含めた横浜市は神奈川県全体よりも更に高い数値ではないかと予想されます。
そこで、ご自宅以外にも不動産をお持ちの方やまとまった現預金・有価証券を保有されている方は早めに相続税の試算をされることをお薦めいたします。
では、相続税申告はどんな場合に必要となるのでしょうか?まずは「相続税が発生する場合」からお伝えします。
相続税は相続が発生したすべての方にかかるものではなく、遺産総額から債務総額を引いた「正味遺産総額」が、法定相続人の人数によって決まる「基礎控除額」を超える場合に、超える部分に対して税金がかかる仕組みになっています。
ですから、まずはご自分が相続税が発生する可能性があるかないかを試算することが、相続対策の第1歩となります。
なお、先ほど基礎控除額は法定相続人の人数によって決まるとお伝えしましたが、以下のように考えていただくとわかりやすいと思います。
法定相続人 | 基礎控除額 | 計算式 |
---|---|---|
配偶者のみ | 3,600万円 | 3,000万円 +(600万円×法定相続人1人) |
配偶者と子供1人 | 4,200万円 | 3,000万円 +(600万円×法定相続人2人) |
配偶者と子供2人 | 4,800万円 | 3,000万円 +(600万円×法定相続人3人) |
配偶者と子供3人 | 5,400万円 | 3,000万円 +(600万円×法定相続人4人) |
子供3人 | 4,800万円 | 3,000万円 +(600万円×法定相続人3人) |
次に「相続税は発生しないけれども申告が必要な場合」についてお伝えします。
「えっ、相続税がかからないのに相続税申告が必要なのか?」と驚かれた方も多いと思いますが、以下の様な軽減措置を使った場合は相続税申告が必要となりますので注意しましょう。
親と同居しているといった一定の要件を満たす相続人は、相続の際の自宅の土地の評価額を80%減額できることなどを定めた特例です。
上手に使えば大変お得な制度ではありますが、メリット・デメリットもあり、専門家でないと判断が難しいため、必ず税理士に相談するようにしましょう。
配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものの額が1億6000万円まで、それを超えても法定相続分までは課税されない制度です。
これも大変お得な税度ではありますが、配偶者控除を使うと「一次相続」の際の相続税は抑えられるものの、次の配偶者の相続である「二次相続」の相続税が高くなることが挙げられますので、必ず税理士に相談するようにしましょう。
次に、相続税申告の期限と納付方法をお伝えします。
項目 | 内容 |
---|---|
相続税申告期限 | 相続の開始を知った日から10ヶ月以内です。 ※相続税は申告書の作成に期間を要しますので早めに依頼しましょう。 |
相続税申告書提出先 | 被相続人の死亡時の住所を所轄する税務署 ※相続人の住所地を所轄する税務署ではありませんのでご注意下さい。 |
相続税の納付先 | 納付書(銀行・郵便局・税務署等にあります)に納税する相続人の住所、氏名、申告書提出先の税務署名を書いて、銀行、郵便局、税務署で納付します。 |
※期限に遅れると延滞税や加算税がかかる場合がありますので注意が必要です。
尚、遺産総額よりも債務が多い場合など、相続しない方が得な場合には「相続放棄」もしくは「限定承認」をする方法もありますが、この場合は相続の発生を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出なければなりませんので、多額の負の遺産がある場合には早めに対処することをお薦めします。
ここまで説明して来ましたように、相続税申告は「相続の発生を知った日から10か月以内」に相続税申告書を所轄税務署に提出し、現金で納付しなければなりませんので「10ヶ月なんてまだまだ先」などと思わず、早めに準備を始めましょう。
また、我々の都合を申し上げるようで恐縮ですが、相続税申告は税理士事務所が申告書類を作るだけでも、様々な資料を取り寄せ、調べなければなりませんので、最低でも3ヶ月前にはご依頼いただけますとありがたいです。
更に、先ほど「相続税は現金で納付」とお伝えしましたが、手元に現金がない場合には「土地やその他資産を売却して現金を用意」しなければならず、それなりの日数も必要となります。